日本の株はねずみ講(切手収集)
2002年10月4日
宇佐美 保
最近は、日経平均は、9000円を割ったとかで、マスコミは政府の無策をなじっています。「週刊現代」(02.10.12)等では、“全員退場せよ!経済3バカ大臣”等と書きたてています。
そして、10月2日の朝日新聞には次のような馬鹿げた記事まで載せています。
「政策見えず愛想尽きた」 株式運用からサンリオ撤退 創業来42年、経営の2本柱
キャラクター玩具最大手のサンリオは1日、証券市場での資産運用を9月末で打ち切ったと発表した。創業以来42年間、本業と並ぶ経営の二本柱として位置づけ、株の現物と先物の売買を続けてきた。しかし、「政治家や官僚らの無策で株式市場は落ち込む一方。運用の場として愛想が尽きた」(辻信太郎社長)という。
「ハローキティ」などの使用料を主な収益源とする同社は、設備投資をあまり必要としない分、証券運用に力を入れてきた。IT(情報技術)バブルに乗った00年3月期には500億円の運用益を上げたこともある。
しかし、最近は、9月中間期に97億円の運用損を計上。会社の経常損益が105億円の赤字に転落する見通しになり、運用中止を決めた。
辻社長は「過去にも市場に波はあったが、今回は株価を支えようという本気の政策が出てこない意味で史上最低だ。永久に再開しない」と話す。
(下線は私が施しました)
こんな手前勝手な発言を一流会社の社長がするとは問題です。
又、こんな発言をそのまま載せたり、日経平均は、9000円を割ったのは、政治が悪いと書きたてるマスコミも問題です。
私文“日本の株価は未だ高い”に書きましたように、現時点でも、日本の株価は高いのです。
何しろ、現状の利回りは、1%少々です。
それでも、“1%なら、銀行の利回りよりもまし”と勘違いしてはいけないのです。
“今は、低金利時代ですから、銀行の利回りより有利なのだから、株を売らないで持っていれば、利回りだけで利益が出る。”と勘違いしてはいけないのです。
経済の様相が変わって、高金利時代になったらどうするのですか?
利回り1%の株を持ち続けるのでしょうか?
それに、一寸株価が下がってしまえば、こんな利回りは直ぐに無に化してしまいます。
更に、東京証券取引所のホームページからのTOPIXに関するデータをグラフ化して見ますと、今の株価の高過ぎ加減が直ぐ分かります。
(年次変化の「日経平均」のデータは、入手できませんでした)
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このグラフを見れば直ぐ分かることは、日本の株価は、「神話:土地の値段は上がり続ける」に振り回された「バブル景気」で急上昇してしまった経済の病気だということです。
TOPIXが、今で900、バブル前の1960年代で100台ですから、このTOPIXの変化から単純に計算して、利回りは、バブル前でしたら今の1%位の(5〜)9倍即ち、(5〜)9%位はあったわけです。
このバブル前の株価が、正当値な株価なのではありませんか!?
今回の下落がなく、株価がバブル期同様に上昇し続けたらどうなるのですか?
利回りは1%も割ってしまいます。
(バブルの絶頂期では、利回りは0.03%程度だった筈です)
(バブル熱で頭が狂って居なかったら)そんな株を誰が買うのですか?
とんでもない暴言を吐く「サンリオ」の社長でも、創業以来42年間、株の運用で収益を上げられたのは、42年前(1960年代)のバブル前にシコタマ株を仕込んでおいたら、ぼろ儲けが出来たわけです。
また、常に平均株価が上昇していれば、金持ちは常に株でぼろ儲けが出来るのです。
(何しろ、全銘柄を均等に購入していさえすれば、平均株価の上昇と共に、頭も使わずに利益をあげることが出来るのです。)
しかし、常に上がり続ける株価というものは、全く「ねずみ講」と同じなのです。
「ねずみ講」は、親から子供、孫、曾孫……と後継者が続いて行けば、親は、鼠算的に増え続ける曾孫達から大金が入り、子供にもいつかは曾孫達が出来、孫達にも……、といった具合に、誰もがお金をシコタマ手に入れることが出来て、みんなが幸せになれるのです。
こんなに嬉しいことはありません。
ところが悲しい事に、いつか後継者が絶えてしまうのです。
(そして、かってブームとなった、「切手収集」の様でもあります)
株も(土地の投機も)同じです。
株価(地価)が上がり続けていれば簡単に誰でも幸せになれます。
株を買って、暫くして適当に値上がりしたら売れば良いのですから、簡単にお金儲けが出来ます。
こんなに良い事はありません。でもこんな良い事は長く続かないのです。
株価がどんどん上がり続けると、最後には、異常に高くなった株に手が出なくなります。
(お金の工面もさることながら、あまりの異常な株価(地価)に怖気付いて株(土地)から手を引く人達が続出するでしょう。)
この状態が今ではありませんか?
若しも、政治家、官僚に責任があるとしたら、バブルに浮かれた、この株の異常上昇に歯止めを掛けなかったことです。
繰り返しますが、今の株価の下落の尻拭いを政府や官僚に押し付けてはいけないのです。
責任は、バブル熱に浮かされて買った本人達にあるのです。
特に問題なのは、バブル時代に企業の持つ土地などの含み資産を材料に株価を買い上げ、更には、株式持ち合いによって株価水準が押し上げた上に、そのバブル期の株をシコタマ抱え込み、含み損を多量に計上し、銀行の機能を失墜させた無能な銀行幹部たちです。
今のように銀行が機能不全にならなければ、どんなに株価が下がろうが、株価は本来の株価に戻って行くのですから何の問題もないのです。
政府は株価対策をすべきではないのです。
そして、マスコミは、株価の下落の責任を政府に持ってゆくべきではないのです。
そして、悲しい事には、これらの無能で恥知らずの銀行幹部たちの尻拭いを、我々国民全身が行わなければならない事です。
(それなのに、自分の責任でガタガタにした銀行を去る際にも、退職金をガッポリと懐に入れることを恥とも思わない銀行幹部は日本人なのでしょうか?)
マスコミも、我々も文句を言うなら、無能で恥知らずの銀行幹部達に浴びせるべきです。
そして、今の株価の異常さは、政治家たちの発言(なんら経済的に効果の無い)が、直ちに株価に反映されるということです。
即ち、今の株価は、利回りに基づいた「投資」ではなく、株価の乱高下によって利鞘を稼ごうと図る機関投資家達(というより投機家達)の「投機」によって左右されているのです。
こんな投機家達の陽動作戦に嵌ってはいけないのだと思います。
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